ビジネスを収益システムとして考える

バリューチェーンとは生産から販売までの付加価値の連鎖のことです。会社に入ると導入研修なんかでよく言われます。次工程の人にありがたがられるように仕事をしようと。会社はお客様のところに製品が届いてはじめて、その対価として収益をあげることが出来ます。だから最終的なアウトプット(製品)が良くなるよう各工程創出した価値をリレーしていけば、それがめぐりめぐって自分の利益になるのです。


バリューチェーンということばを初めて聞いたとき、イマイチ何のことを言っているのか分かりませんでした。価値をリレーして製品につなげるなんて当たり前のことだと思ったからです。でも本当はこう理解すべきだったんですね。担当する工程が高い評価を得るために自分がとるべきバリューチェーン戦略を考えなきゃあかんよ、生き残れんよということです。


パソコン販売の利益は、CPUとOSをやっているインテルとMSが大きく占めています。何故そうなっているかといえば、インテルとMSがそう仕掛けたからでした。一台のパソコンにからなず一つインテルとMSの製品が必要だったので、パソコンの普及台数をどんどう大きくしていけば自分の所が儲かるだろうと考えたわけです。普及台数をあげるためには一台あたりの単価を安くする必要があります。だから、CPUとOS以外のモニターやアプリ、周辺機などはどんどん低価格化が進むように仕向けました。具体的にはインターフェースの統一や労働力の安い国への外注などを積極的に推進したということでしょう。一方バリューチェーンの後ろ側にいて高精細なモニターだとか使いやすいソフトウェアだとかの開発に熱心だった日本の企業は、インテルとMSのパソコン普及戦略(コモディティ化戦略というそうです)に貢献しただけで結局パソコン業界の勝ち組みにはなれませんでした。


学ぶべきは、エコシステムの中でやるビジネスとはアウトプット(顧客価値)に貢献したからといってそれが直接自分の利益になるとは限らないということです。日本企業が開発したモニターやソフトウェアは間違いなくお客様の価値になっていたはずですが、その裏でインテルとMSがパソコンの低価格化を進めるためにあれこれ画策しているわけですから折角の日本のダントツ技術もすぐにコモディティ化してしまいます。会社で、「部長こんな凄い技術が出来ました!」「よし、すぐに水平展開だ、生産は台湾でやらせよう」といってあっという間に安上がりでだれでもできる技術にしてしまう部長がインテルやMS、製品に自分の技術が乗って嬉しいな、特許報酬も数万円もらえたしうしし、と喜んでいる平社員が日本企業・・というようにしか見えません。(そしてインテルやMSの背後にはどんどんネットユーザーを増やそうとしてるgoogleがCPUもOSも安くするからネットに人集まれ〜と叫んでいるわけですね)


といわけでバリューチェーン戦略において自分の立ち位置をしっかり考えるというのは、ステークホルダーをうまく利用できる体系を目指すことであるし、バリューチェーンが切れそうなところに早めに対策を打つことです。お客様のお役にたちたいとか、これができれば凄くいいものができるとか、そういうのは市場原理が働かないところでやればよくて、ビジネスってのは規模が大きければ大きいほど収益システムとして考えないとまずいですよ〜という話しでした。