評判邦画の比較
「花とアリス」「パッチギ!」「フラガール」「おくりびと」を続けて観てみた。心の中の邦画最高峰「花とアリス」を最近の評判作と比較してみるという試みであったのだけど、別に私自身、映画に詳しいわけでも作品作りに関わった経験があるわけでもないので、まあ何となく備忘録程度に書いておくものである。
- 主題
花とアリスは彼女たちの青春、パッチギは愛は国境を超える、フラガールは地方復興の草の根運動、おくりびとは輪廻転生、いずれも普遍的で身近なテーマ(パッチギはそうでもないか)。ヒット作ばかりなんだから当たり前といえば当たり前だけど。お>ぱ=花=フ
- 脚本
花とアリスは監督自ら脚本も手がけていて、映画の雰囲気とセリフ回しの親和具合が秀逸なのである。フラガールは次こういうだろうな的なセリフがそのままドンピシャでくるような微妙さであり、おくりびとはいくつか見ている人に違和感を与えるようなところがあって減点。パッチギはハングルが混ざっているのでなんとも評価し難いところ。日本語の混ざり具合は何か意図か決め事かがあるのだろうか?花>パ>お>フ
- 映像・演出
花とアリスは岩井俊二風そのまま、パッチギは昭和のドラマみたい、フラガールとおくりびとは二時間SPドラマみたいな感じ。おくりびとのチェロ独奏は笑うとこではないはずなのについ笑ってしまったので減点。岩井俊二の映画は、映画としての演出ではない(CM風のオシャレ感があるだけ)と評論されるようだけど、映画としての定義なんて知らないし気にならないな、僕は。花>パ>フ>お
- ドラマ性
フラガールは実話ベースだし、古い村社会(現代社会にも部分部分に潜む価値観)の変革や自己成長のプロセスなど、登場人物がやることを自分自身に投影して感動できるところが多い。おくりびとは、死を迎えたり死を送り出したりする瞬間のことに想いを馳せると、表現されている以上の世界に気づくことができる。パッチギは、暴力的で野獣のような朝鮮人のことなんてよう分からんよと突き放したくなる一方で、そうした人たちに無関心であっていいはずがないという変な感情を揺さぶられるところがある。フ>お=パ>花
- テンポ
どれもいいのだけど、全編通して良かったのは花とアリス。無駄な場面がないシーンの織りなし感に感服させられる。パッチギとフラガールは流れの強弱があるといえばプラス材料のようでもあるけど、盛り上がりすぎた後に変にまったりして突如スクリーンの世界から引き剥がされる感じが微妙ではある。花=パ=フ=お
- トータルバランス・世界観
花とアリス以外は、個人とコミュニティ、いわゆる部分と全体論が組み込まれていて、その世界観についても、とくに昭和の活力があった(とされる)時代を、やや悪く言えばステレオタイプに捉えている感じがある。花とアリスのまだまだこの作品の中にいたいと思わせるような、嘘のようで嘘でない世界が大好きである。花>パ=フ=お
- 音楽
花とアリスは音楽も監督自ら作曲、すごい。パッチギはフォーククルセダーズ、フラガールはハワイアン、おくりびとは久石譲ということで、甲乙付けられないな、どれも良い。花=フ=お>パ
- キャスト
花とアリス、フラガールの蒼井優がどうしてもすごいわけで、ずっと前は若手女優でフィギアでいうと中野友加里みたいな立ち位置(顔が似てるだけ?)だなと思ってたのだけど今やもう、という。笹野高史さんは大事にしなきゃな脇役ですよね。
というわけで、ほとんど頭使わずにつらつら書いたけどね(中身が無いなあ)。分かったのは「花とアリス」がやっぱり秀逸だってのと、「パッチギ」は意外に悪いところがなくて良作だというところ。僕の世代では、岩井俊二は庵野秀明と並んで監督二強なわけで、この辺の影響が今の草食系男子増殖に繋がっているといっても過言ではない!・・飛躍しすぎ。ともかく来月公開の新作「ニューヨーク、アイラブユー」の岩井俊二×クリスティナ・リッチが楽しみだなあ。