恋愛と贅沢と資本主義

けだし名言ですね。
非合法的恋愛の合法的な子供である奢侈は資本主義を産み落とした。


ヴァルナー・ゾンバルトの「恋愛と贅沢と資本主義」を読みました。中世から近世にかけての経済の拡大、とくに贅沢消費に誘起された資本主義経済の発達について、この本で示される数字の羅列は妙にリアリティがあってなかなかに迫るものがあります。恋愛や虚栄心のために贅沢をし、自らを飾るためには家計や暮らしのことなどおかまいなしだった人たちが資本主義による経済成長の起点となり、はたまた、ビジネスモデルもなく利益を追求した金融の強欲が環境配慮型の経済の起点となる・・いやあ世の中わからんもんだというわけです。


はっとさせられる名言が多い本です。まあ著者は戦時のドイツ人ですから資本主義批判的な側面からずばっと切れ味が良いことをいうわけです。金持ちの贅沢のためのくだらない仕事しかしないような人間が自分で生活をしていると信じているとか、金持ちが尊敬を受けるようになったら金持ち以外の人たちの尊厳はどうなるのかとか。まあね〜


手工業と資本主義的生産体制について、自分の仕事に誇りが持ててやりがいがあるのは前者だけど、本当にいいものを作りたいなら後者でなければならないということを書いています。結局歴史を勝ち残ったのは資本主義的な生産体制、すなわち効率性と継続性に優れる分業体制だったわけで(もちろんすべての品物に当てはまるものではないですが)僕らもこの延長線上にいるわけです。分業の楽しさみたいなことを様々な啓蒙書が書いているけど現実は当時とそれほど変わっていないって感じですよね。しかし、こうした産業と経済の発展を目の当たりにした当時の人たちに思いが巡りますよ。マリーの贅沢や無駄遣いもその時代においては産業を活性化させるためのいわば公共投資であったなどと妄想を抱きたくなるほどです。


ともかく読んでよかったと思える本でした。文庫で安価なので是非どうぞ。

恋愛と贅沢と資本主義 (講談社学術文庫)

恋愛と贅沢と資本主義 (講談社学術文庫)